令和4年6月 定例議会

自由民主党の松平雄一郎です。令和4年6月の定例議会に当たりまして、自由民主党・無所属を代表して、質問をさせていただきます。区長、教育長の明解なご答弁をお願いいたします。

今回の質問項目は、1.喫煙所の整備について、2.デジタル教科書の導入状況について、3.都型学童クラブの整備状況について、4.CO2排出量の削減に向けた取り組みについて、5.ふるさと納税による流出額への対応について以上、大きく5項目について質問をさせて頂きます。宜しくお願いいたします。

1.喫煙所の整備について

はじめに、今後の喫煙所の整備についてお聞きします。

喫煙を取り巻く社会情勢の変化により、非喫煙者の健康被害を守るため、令和2年4月から「東京都受動喫煙防止条例」並びに「改正健康増進法」が全面施行され、原則、屋内禁煙となり、決められた場所以外では喫煙ができなくなりました。本区においても条例を一部改正し、令和2年7月から、指定喫煙場所を除く、文京区内全域の屋外の公共の場所での喫煙を禁止といたしました。この条例は、喫煙マナーの向上及び地域の環境美化を促進し、公共の場所における喫煙及びポイ捨てをなくすことを目的としております。

しかしながら、条例施行後、未だ路上で喫煙する人は多く、普段タバコを吸わない非喫煙者の方から、しっかりとした分煙対策を進めてほしいという声も多く届くようになりました。この原因として、区内の喫煙所の数が足りていない、という状況が考えられるのではないか思います。

条例施行や法改正の後、行政施設、学校・病院などは敷地内禁煙となり、多くの喫煙室がなくなりました。またオフィスビルなどの民間の施設内や敷地内に残っていた喫煙所も閉鎖する所も多く、減少をしております。後楽二丁目地域やその周辺においては、飲食店の屋内禁煙や多くの喫煙所の閉鎖に伴い、まだ残っていたオフィス敷地内の喫煙所に、多くの喫煙者が今まで以上に集中した結果、灰皿の管理や清掃が難しくなり、結果閉鎖を余儀なくされ、さらに喫煙所の減少に拍車をかけるという事態も起きております。

結果的に喫煙者は行き場を無くし、路上の影や、駐車場等の私有地の屋外で喫煙をするという光景を多く見るようになっております。本区の喫煙マナー指導員による、条例違反者に対して注意・指導を行って頂いている所ではありますが、根本的な解決には至らないように感じています。こういった現状に関して、区はどのような認識を持っておりますでしょうか?伺います。

礫川公園をはじめとする区立公園等にあった喫煙所は閉鎖され、現在、本区の指定喫煙所はシビックセンター1階屋外指定喫煙場所と御茶の水橋際公衆便所横指定喫煙場所の2か所であります。公園でのたばこの煙による子ども等への受動喫煙が問題となりましたが、現在、煙が外に漏れないコンテナ型の喫煙所も都内で多くみられるようになりました。各区によって整備状況に差がありますが、コンテナ型を含む指定喫煙所の数は、千代田区は48か所、台東区は17か所、港区96か所、豊島区2か所、新宿区7か所などであります。

行政施設をはじめとする第一種施設の屋外の一部のうち、受動喫煙防止のために必要な措置がとられた場所に関しては、本区においても「特定屋外喫煙場所」の設置は可能です。場所や予算の課題はあるものの、本区におけるたばこ税の令和4年度歳入見込み額は約9億1千万円であり、一般財源ではあるものの、この歳入を原資に整備を進める事も可能と考えます。本区の喫煙所の設置状況の現状認識と、今後の指定喫煙所の整備の方針に関して、どのような見解をお持ちでしょうか?お伺い致します。

また、喫煙所の整備は、助成金を活用した民間の喫煙所の整備を促す事も重要だと思います。本区においても屋内喫煙所設置費等助成を行っており、昨年度までは東京都の補助金を活用しながら、設置費として上限400万円、維持管理費として5年間を限度に年間60万円までの助成を行っております。これまで4か所の民間喫煙所の整備を行ってきた所でありますが、設置できる場所が少ない、近隣住民の同意が難しいなど様々な要因により、整備が順調に進んでいるとは言い難い状況かと認識しております。

他区の民間喫煙所の整備状況をみてみると、多くがチェーン展開している喫茶店・カフェ・またはコンビニエンスストアで整備が進んでおり、そうした店舗からすると、現状の維持管理費の年間60万円(月5万円)かつ5年間が限度では、コスト面などでのメリットが少ないように思います。今後、助成金額の拡充や、電気代・水道代・ごみ処理委託費用以外への助成対象の拡充など、より柔軟性を持った制度にする必要もあると感じます。現状の「屋内喫煙所設置費等助成」を活用した民間喫煙所の整備状況の課題と、今後どのような方法で整備を進めていく方針でしょうか?本区の見解を伺います。

望まない受動喫煙の防止を図るため、特に健康への影響が大きい子どもたちや妊産婦を守るため、喫煙者と非喫煙者、両者が住みやすい分煙対策を、しっかりと進めていって頂ける事を強く願います。

成澤区長 答弁

松平議員のご質問にお答えします。

最初に、喫煙所の整備に関する質問にお答えします。

まず、喫煙者のマナー等についてのお尋ねですが、

指導員による巡回やマナー向上を訴えるプレートを掲示する等、これまでの取り組みの成果もあり、喫煙者のマナーは、向上してきていると認識しております。

一方で、私有地の駐車場や通路等において、喫煙による迷惑行為があることも把握しており、引き続き、地域美化や安全確保の観点からも、より一層の喫煙者のマナー向上に取り組んでまいります。

次に、区内の喫煙所についてのお尋ねですが、

本区の喫煙所の設置状況は、指定喫煙場所が2か所、屋内喫煙所が4か所となっております。

喫煙所の新たな設置に向けて、指定喫煙 場所は、周囲の歩行者等への配慮及び適正な維持管理等、設置の要件を整える必要があるため、その可能性を探っているところです。

また、屋内喫煙所については、昨年度、民間の喫煙所を1か所整備したところです。今後、屋内喫煙所設置費等助成をより使いやすいものとなるよう検討し、更なる整備を進めてまいります。

2.デジタル教科書の導入状況について

次に、小学校のデジタル教科書の導入状況についてお聞きします。

学習指導要領の改訂などを背景に、紙の教科書は年々分厚く重くなっており、タブレット端末の持ち帰りが始まったことにより、児童が背負うランドセルの重さは、以前と比べると重くなってきております。民間団体の調査によると、児童への分かりやすさを追求したレイアウト変更等の理由により、教科書の総ページ数は年々増えており、道徳と英語が教科化されていなかった15年ほど前と比較すると1.8倍、と約2倍近くに増えています。

デジタル教科書への移行期という事情もありますが、特に体の小さい小学校低学年の保護者からランドセルの重さを懸念する声や、小児科の専門医から、「子どもの成長のためにも、少しでも軽くした方がいい」と警鐘を鳴らす声も多く聞こえてくるようになっています。

GIGAスクール構想が発表される以前の平成30年9月に、文部科学省は全国の教育委員会に「児童生徒の携行品に関わる配慮について」という、児童の負担軽減に向けた、通学時の持ち物の重さや量を工夫するよう通知を出しました。この通知には、家庭で使わない教科書を学校に置いていいとする「置き勉」や、水彩道具や習字道具などの学習用具は当日ではなく、計画的に持ってきたり、持ち帰ったり事も可能とした工夫例を示しており、これまで区内の各小学校においても、軽量化に努めてきた所かと思います。

コロナ禍において、多くの小学校ではタブレット端末を毎日持ち帰ることを基本としておりました。陽性者が発生した際の、急な学級閉鎖などに対応するオンライン授業にも役立ってきた所でありますが、少し感染状況が収まってきた今、児童の通学時の負担軽減という観点から、デジタル教科書への移行期においては、もう一歩踏み込んだ各校における対応、特に小学校低学年の運用方法に柔軟性を持たせる工夫も必要なのではないかと感じています。

文部科学省は、デジタル教科書について令和6年度からの本格導入を検討しておりますが、このデジタル教科書の導入と普及によって、将来的に紙の教科書の量が減り、児童の通学時の負担軽減にもつながっていくと思います。本格導入に向けた費用負担、現行制度の見直しなど課題はありますが、本区における本格的なデジタル教科書の導入に関して、時期や検討の状況はいかがでしょうか?また本区は、国の実証事業に参加し、デジタル教科書を試験的に使用してきている所ではありますが、試験運用を受けての反響や課題などについて、そして紙の教科書との併用に関する方針についてお伺いいたします。

デジタル教科書は、紙の教科書ではできない、動画視聴や図形の拡大縮小、音声の読み上げなど、様々な機能があり活用に大きな期待を寄せる所であります。一日でも早いデジタル教科書の普及と児童の通学時の負担が軽減されるよう、教育委員会と各学校との連携に期待をしております。

加藤教育長 答弁

教育に関するご質問にお答えします。

はじめに、デジタル教科書の導入についてのお尋ねですが、

現在、区立小・中学校全校が文部科学省による「学びの保障・充実のための学習者用デジタル教科書実証事業」に参加しており、小学校5・6年生及び中学校全学年で英語に加えて、国語または社会の2教科でデジタル教科書を利用しております。

その結果、資料等の拡大表示、音声や動画の再生、書き込みの修正や保存が可能になるなど、児童・生徒の学習上の困難さの低減や学習意欲の向上、家庭学習での活用などに効果が見られております。

今後とも、デジタル教科書の使用実践を通して、より効果的な場面での活用を模索していくことが必要と考えております。

紙の教科書との併用については、活用場面に応じて、それぞれの長所を生かすことが大切であり、どちらも活用することで、よりよい教育活動ができるものと認識しております。

デジタル教科書の導入拡大につきましては、国や都の動向を注視し、引き続き、適切な時期に適切な対応がとれるよう検討してまいります。

なお、現在、タブレット端末の持ち帰り等については、感染症の状況や授業等での活用状況に合わせて、各学校において適切に対応しております。

3.都型学童クラブの整備状況について

次に、都型学童クラブの整備状況についてお聞きします。

現在、本区において小学生の放課後の過ごし方として、区立育成室、放課後全児童向け事業「アクティ」、児童館、そして都型学童クラブと様々な選択肢を用意し、事業を行っている所であります。その中でも都型学童クラブは、区の育成室では実施をしていない、多様な保育のニーズに対応するために、東京都の基準に沿って、民間の事業者が、区の補助を受けて運営する学童クラブになります。保育料金は、区立育成室に比べると月3万円前後と高い設定ではありますが、その分サービスに大きな違いがあり、例えば利用時間は、育成室は18時半なのに対し、都型は19時まで、希望すれば21時まで延長する事もでき、夕食の提供も可能です。また区立育成室では対応していない4年生~6年生も受入可能であり、学童クラブ利用中の塾等の習い事の送迎、中抜けの対応も可能となっております。スポットでの利用や、民間ならではの様々なイベント等の独自のプログラムも充実しており、区民の利用者の満足度は非常に高いのではないかと感じております。

現在、都型学童クラブは区内に7か所あり、都型を選べる環境にある学校に通う家庭に関しては、その家庭のニーズに合わせた放課後の過ごし方を選択できる状況かと思います。しかしながら、区立育成室とサービスの違いがあるにも関わらず、都型学童クラブを選べる環境にない、小学校に通わせている家庭も区内に多く存在しております。現在、本区において都型学童クラブに通わせることができないエリア、いわゆる空白地はどこに存在していると認識しておりますでしょうか?区の見解を伺います。

また、本区においては育成室に入れない待機児童が近年発生しており、その解消に向けた育成室の整備を進めている所だと認識しております。この都型学童クラブの整備が進めば、当然、待機児童の受け皿確保にもつながりますが、居場所の提供だけに止まらない、付加価値のあるサービスの提供を行っている都型学童クラブに関しては、希望する家庭が選べる環境を整えるという、待機児童対策とは別の視点での整備を進めていって頂きたいと思います。本区におけるこの都型学童クラブの整備に関して、今後どのような方針で進めるお考えなのか?伺います。

区内には、様々な働き方をした小学生の子を持つ共働きの家庭が多くあります。都型学童クラブはそういった家庭のニーズをとらえる事ができると思いますので、来年度に向けた整備について、是非、注力をしていって頂きたいと思います。

加藤教育長 答弁

最後に、都型学童クラブの整備についてのお尋ねですが、

既存の都型学童クラブに通うことが難しいエリアは、根津・千駄木地域及び大塚地域と認識しております。

育成室では対応できないニーズに対応するために都型学童クラブの誘致を進めているところであり、引き続きこの方針に基づき、都型学童クラブを積極的に誘致してまいります。

4.CO2排出量の削減に向けた取り組みについて

次に、今後のCO2排出量の削減に向けた取り組みについてお聞きします。

今年2月、区長施政方針において、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ」を目指すことを表明いたしました。令和4年度においては2つの重点施策を掲げ、ゼロカーボンシティの実現に向けた取り組みを新たにスタートさせた所であります。一つ目がシビックセンターにおける再生可能エネルギー電力の導入、二つ目が「クールアース文京都市ビジョン」の実現に向けた事業者への支援であります。本区のCO2排出量の半分以上を占める民生(業務)部門の削減に向けた取り組みは必要不可欠であり、この二つ目の施策に期待を寄せる所であります。民生(業務)部門に該当する業態としては、具体的に事業所ビル、大型小売店、その他卸・小売店、飲食店、ホテル旅館、大学等の学校、病院などの施設が該当します。今回の施策において、具体的にこれらの事業者等にどのようにアプローチをし、どのような支援を行っていく方針でしょうか?また、特に民生(業務)部門における、排出量の多い大規模事業所は、それぞれCO2削減に向けた方針や目標もあり、今後の行政との密な連携は重要になってくると感じます。区内全体の削減にも影響がある大規模事業所に対する、今後のアプローチ方法や支援・連携についてはどのようにお考えでしょうか?お伺いいたします。

令和3年度、特別区長会として、ゼロカーボンに向けた各区の課題を研究し、特別区が連携・協同してその実現に向けた取り組みを加速化させるための調査研究を行いました。その調査結果によると、特別区における取組の方向性として、業務部門においては、事業者の省エネや再生可能エネルギー導入の促進のため、23区共通の枠組みの検討し、再生可能エネルギー電力の調達における連携が望ましい取り組みとして挙げられておりました。

本区においては、今年度、省エネ対策として、東京都の「中小規模事業者向け省エネルギー診断」を活用した支援を行っていく方針であり、専門家による無料の省エネ診断と具体的な改善指導は、昨今の燃料・電気・ガス料金の高騰にも多いに役立つと感じており、大変期待をする所であります。一方、再生可能エネルギー導入促進に関しては、今年度シビックセンターの再エネ電力の導入を行う所ではありますが、事業者に対しての再生可能エネルギー導入促進に関しては、どのような方針をお持ちでしょうか?今回のこの特別区長会での調査結果を受けての、再エネ導入に関する、本区の方向性についてお伺いいたします。

千代田区においては、区民や中小事業者に再生可能エネルギーを供給するため、森林整備協定を結ぶ複数の地方自治体と連携協定を結び、太陽光発電や水力発電など各地の再生可能エネルギーを、仲介業者を介して購入できる取り組みを発表いたしました。今後23区としての再エネ電力調達の枠組み構築に関する動きも出てくる可能性もあります。地球温暖化が原因と思われる様々な気候変動による自然災害の発生を少しでも食い止めるため、約1千万人の人口を抱える特別区として、そして文京区としてできる取り組みを、少しずつでも前に進めていって頂きたいと思います。今後の本区の脱炭素に向けた取り組みに期待をいたします。

成澤区長 答弁

次に、二酸化炭素排出量削減に向けた取り組みに関するご質問にお答えします。

まず、民生・業務部門の事業者に対する取り組みについてのお尋ねですが、

脱炭素社会を目指す「クールアース文京都市ビジョン」の実現に賛同していいただいた、区内事業者が行っている脱炭素・省エネルギー化等の取り組みや効果を「見える化」し、区から発信することで、他の区内事業所への啓発と二酸化炭素削減の促進に取り組んでまいります。

具体的には、来月から区ホームページで、ビジョンについての周知を行い、賛同を呼びかけるとともに、区内の大規模事業所に対しては、個別に文書の送付と訪問による説明を行ってまいります。事業者との顔の見える関係をつくりながら、それぞれの事業者が持つ課題等の把握に努めるとともに、解決に向けた支援や連携等について、丁寧に対応してまいります。

次に、事業者に対する再生可能エネルギー導入促進についてのお尋ねですが、

「地球温暖化対策地域推進計画」においては、事業者が主体的に再生可能エネルギーや先進的エネルギーの利用を検討し、積極的に導入することが重要であることを掲げております。

現在、都が実施する事業者向けの補助事業の周知等により、区内事業者の再エネ等の導入支援に努めているところです。

一方、今般の電力市場価格の高騰などを背景に、再エネの需給バランスは不安定な状況にあるため、市場の動向について注視してまいります。

引き続き、他自治体の先進的な取り組みや区長会報告書にある事例などを踏まえ、今後の取り組みについて、研究してまいります。

5.ふるさと納税による流出額への対応について

最後に、ふるさと納税による流出額への対応についてお聞きします。

平成20年にふるさと納税制度が始まり、今年で14年目となりました。平成27年に確定申告無しで手続きができるワンストップ特例制度が始まった影響などもあり、現在、当初の規模から80倍以上に膨らんでおります。返礼品競争が過熱し、制度そのものが問題視された事を受け、令和元年6月に総務省が主導して法改正を行い「返礼品の寄付額は3割まで」となり、多少ブレーキがかかったものの、未だ寄付総額は増加を続けております。

税制を通じてふるさとへ貢献するという本来の制度の目的により、財政的に潤う地方自治体がある一方、改善の兆しが見られないのが、東京23区を含む都市部の自治体であり、住民税の「流出」の問題の深刻さは年々増している状況であります。昨年度、東京23区では区民税の約5%にあたる計531億円が他自治体に流出をいたしました。文京区においても、6年前の平成28年には5.3億円の流出額でありましたが、年々増加の一途を辿り、昨年度においては21.4億円、今年度の推計は25.4億円と見込んでおります。

ふるさと納税の利用者は、未だ国民の約2割という調査結果もあり、制度の浸透が進むにつれ、本区においてもさらに利用者が増加し、今後30億、40億と、今以上の流出額の増加も想定ができます。まずお聞きします。年々増加の一途を辿る住民税の流出に関して、本区はどのような認識を持っておりますでしょうか?また今後の本区の流出規模は、どのように推移していくと想定しておりますでしょうか?お伺いいたします。

総務省が公表する昨年度の統計資料によれば、住民税控除額が大きかった市区町村の上位は、横浜市、名古屋市、大阪市と大都市が並びます。しかしながら、これらの市は地方交付税による補填が受けられ、減収分の4分の3が戻ってくるため、実質の流出額は4分の1であります。独自の税収で財政運営ができる東京23区は地方交付税を受けていない、いわゆる不交付団体であるため、ふるさと納税で多額の住民税が流出しても、この補填がないという点が、特に東京23区に影響が大きい理由であります。

現在、寄附受入額の多い上位20の自治体だけで、全体の寄付額の2割を占めており、寄付金集めのうまい自治体に偏っている実態や、返礼品の調達をはじめ、広報・事務経費に、各自治体は多額の予算を使っており、全国平均、納税額の半分近くを事務経費に費やしているという実態も明らかになって参りました。地方と都市部の地域間の格差是正のための財源調整の制度としては、多くの問題を含んでいる制度であることは明らかだと感じます。

こういった状況を踏まえ、特別区としては、「本来であれば区民のために使われるべく納めていた税金が、東京には財源に余裕がある等の一方的な見方によって国に奪われている」と主張し、特別区長会や特別区議長会としても、この制度の根本的な見直しを求め、国に要望を出している所ではあります。これまでの区長会としての要望の経緯や成果はどのように分析をしておりますでしょうか?また、今後もこうした要望を継続していく事は重要だと感じますが、今後の国に対する働きかけはどのように行っていく方針なのでしょうか?区の見解を伺います

こうした特別区として制度の抜本的な見直しを国に求め、制度自体に反対の立場をとる一方で、現状としてこれだけの規模の財源流出を見過ごすことはできないと判断し、流出を食い止めるための返礼品付きのふるさと納税制度を進める方向に舵を切った区も、現れているのも事実であります。例えば台東区は、コロナによる観光客の激減による浅草や上野の事業者支援を目的に、名店の食事券や工芸品の制作体験などを返礼品に360種類を用意。また渋谷区では有名レストランの食事券やホテルでのアフタヌーンティーなどの返礼品を中心に据えて200種類以上を実施。その他、墨田区、品川区、中野区、世田谷区などでも実施に舵を切っており、今後も返礼品付きのふるさと納税を行う区が、増えてくる可能性はあります。

現在、文京区においては、過度な返礼品競争に乗っからないという方針で、子ども宅食プロジェクトやウクライナ難民支援など、人道支援を訴え、その寄附への御礼の品の特典は行わないとしております。こども宅食プロジェクト寄附額は令和元年度においては9470万円、令和2年度は6060万円を集め、大変高く評価できるものであります。また今年度、新たにB+(ビータス)を立ち上げ、ふるさと納税の仕組みを使った、区内の地域課題や社会的課題の解決を目的とした企業や大学・研究機関等への資金調達支援が始まった所であり、どういった反響があるのか大変興味深く、大きな期待を寄せている所であります。

こうした、これまでの文京区の方針や姿勢は理解できるものの、流出額の増加に伴う区財政への影響が少しずつ大きくなってきている現状を踏まえれば、何かしらの対応策は検討すべきではないかと感じます。B+(ビータス)自体は地域や社会的課題の解決のためのクラウドファンディングであり、1事業につき数百万円規模の寄付額になると想定できるため、これ自体が流出額の対応策ではないと認識しております。過度な返礼品競争に乗っかる必要はないものの、例えば、区内に数多くある庭園や寺社仏閣などを活用した区の魅力発信や区内地域振興を促す形でのプレミアム体験型の返礼対策、また多くのガバメントクラウドファンディングを実施し、選択肢を増やす事で、累計の寄付総額を上げる対応策など、これまでの区の方針と大きく逸脱しない形での対応策もとれるのはないかと感じます。本区として今後の流出額増加への対応策はどのように考えておりますでしょうか?区の見解を伺います。

本区においても、将来的な生産年齢人口の減少による税収減も想定でき、またコロナ感染状況や世界情勢の先行きが見えぬ中、様々な工夫をこらし、歳入を確保するための施策を今から検討する必要があると感じます。少しでもふるさと納税制度による多額の流出を補うための、区の積極的な歳入確保策に期待をしております。

以上で私の質問を終わります。
ご清聴誠にありがとうございました。

成澤区長 答弁

最後に、ふるさと納税に関するご質問にお答えします。

まず、ふるさと納税による影響等についてのお尋ねですが、

特別区民税の減収額の増加により、特別区においては、行政サービス低下の影響を受けざるを得ない状況にある一方で、議員ご指摘のとおり、地方交付税交付団体においては、ふるさと納税による住民税の減収に対する補てんがなされ、結果的に地方交付税の財源を圧迫する要因にもなっているなど、制度の歪みが顕在化していると認識しております。

また、本制度の定着状況や、全国的に受け入れ額及び受け入れ件数とも伸びていることを考えると、本区の減収規模は、更に大きくなるものと想定しております。

次に、国に対する働きかけについてのお尋ねですが、

ふるさと納税制度については、平成28年度より、区長会を通じ、国に対して、制度の見直しを求めてきたところであり、国は、令和元年度に過度な返礼品競争を抑制するよう制度の見直しを行い、一定の成果を得ているものと認識しております。

今後も、新型コロナウイルス感染拡大防止対策や中小企業への支援策の対応とともに、膨大な公共施設の改築需要や社会インフラの維持・更新等への対応を行う必要があり、このまま減収額の増加が続くと、財政運営が立ち行かなくなる恐れがあることから、引き続き、区長会を通じて、制度をめぐる問題に対処するよう、抜本的な見直しを強く求めてまいります。

次に、減収額増加への対応策についてのお尋ねですが、

ふるさと納税制度は、有効に活用することで、地域の魅力を発信し、地域振興を図る機会ともなることから、本区においても、様々な選択肢を検討していくことは重要だと考えております。議員ご提案の内容も含め、文京区らしい制度の活用に向け、引き続き研究してまいります。