令和7年9月 定例議会
自由民主党の松平雄一郎です。令和7年9月の定例議会に当たりまして、自由民主党文京区議会を代表して、質問をさせて頂きます。
- 下記項目を質問させていただきました。
- 1.独居高齢者へのさらなる支援について
- 2.外国人児童生徒への対応について
- 3.いじめの問題について
1.独居高齢者へのさらなる支援について
まず初めに、「独居高齢者へのさらなる支援について」伺います。
本年は、団塊の世代の方々が75歳以上の後期高齢者となり、いわゆる「2025年問題」のまさにその年を迎えました。社会保険費の負担増や働き手不足などの問題が起きる中で、高齢者の人口は年々増加をし、超高齢社会を迎えています。そうした中、65歳以上の単身高齢者世帯、いわゆる「独居高齢者」も増加傾向にあります。今年7月、厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、65歳以上の単身高齢者世帯は初めて900万世帯を超え、全世帯の16.5%を占めました。前年より約50万世帯の増加であり、統計開始以来、最多となりました。そのうち、75歳以上の後期高齢者の単身世帯が61.7%を占めており、多くの方が健康寿命を超えて一人暮らしをされている状況が明らかになっています。
東京都心においても、地方と比べて、未婚のまま高齢期を迎える方や、子どもと別居する高齢者の比率が高いことを背景に、独居高齢者の世帯数は増加しています。文京区も例外ではなく、かつて家族や夫婦で住んでいた戸建てに、一人で暮らし続ける方や、マンションやアパートなどの集合住宅に住む独居高齢者の割合も増加傾向にあると認識しています。まず、本区における独居高齢者のこれまでの推移と今後の見通しについて伺います。
高齢者が一人暮らしとなる背景には、配偶者との死別・離婚、子どもの独立など様々な理由があります。中には「自由な生活を送りたい」「子どもに迷惑をかけたくない」と自ら選択して、一人暮らしをされる方も少なくありません。しかし、そうした高齢者の方であっても、加齢に伴う身体機能の低下や、認知症の進行などにより、一人での生活が困難になるケースや、年金だけでは生活が成り立たず、貧困に繋がるケースも少なくありません。子どもや親族とのつながり、地域とのつながりが希薄な高齢者も増え、社会的孤立に陥る方も今後、増加していく可能性はあると思います。
独居高齢者が直面する問題は、健康面、経済面、社会的孤立など多岐にわたり、特有の課題があると思います。具体的には、
・病気やケガによる介護の問題
・認知症や病気の早期発見の難しさ
・食事や買い物、掃除など生活全般の困難
・住まいや入院時の保証人・連帯保証人の問題
・孤独を感じやすく、生きがいが低下しやすくなる点
・思考能力の低下に伴う、お金の管理の難しさ
・自宅での緊急時や死亡時の対応
等が上げられます。特に発見の遅れによる事故や孤独死などは、本人のみならず、地域社会全体に大きな衝撃と影響を及ぼします。先日、私の知人の独居高齢者の方も、夜間ベッドから落ちて骨折し、約12時間発見する事ができなかった事例がありました。近くにスマホが無く、携帯電話がある場所までゆっくり移動をし、近隣の方にやっと連絡がとれ発見する事ができました。こうした様々な課題を抱えた独居高齢者の問題は、もはや個人の問題ではなく、社会全体で向き合うべき重要な課題です。
現在、本区では、高齢者あんしん相談センターによる「高齢者見守り相談窓口」や、社会福祉協議会による「みまもり訪問事業」、LED電球を活用した「高齢者見守りあんしん電球サービス」、コールセンター職員が安否確認を行う「見守りあんしん電話」、東京消防庁と連携した「救急通報システム」など、様々な支援策を展開しています。また、町会・民生委員・ハートフルネットワークといった地域の担い手の方々による独居高齢者への見守りや相談支援、さらに高齢者クラブやNPOなどの地域団体による、地域のサロンや趣味のサークル、長寿ふれあい食堂といった場は、独居高齢者が気軽に参加できる環境を提供し、社会参加を促すうえで、極めて重要な役割を果たしてきたと感じています。
しかしながら、今後さらに増加が懸念される独居高齢者の方々に対して、従来の行政サービスや地域の担い手による支援を継続することで、十分な支援を届けられるのでしょうか。実際、町会や高齢者クラブは人手不足や会員数の減少の課題に直面し、未加入の方と接点を持つことが難しくなっています。また、民生委員についても、業務量の増加と担い手不足が喫緊の課題です。支援を必要とする独居高齢者が増加傾向にある一方で、見守りや相談を担う人材が限られている現状に対して、区はどのように認識し、今後どのような見通しと対策を持っているのか、伺います。
また近年、企業によるIoT機器を活用した見守りサービスや、見守り付き賃貸住宅、食事宅配サービスなどを行う、民間のサービスも増えています。本区においても昨年度にはLED電球や扉センサーを活用した見守りサービスを展開してきましたが、今後はさらに民間企業の力も積極的に取り入れ、多様な支援メニューを整えることも必要だと感じます。現状の成果と今後の課題について、区の見解を伺います。
さらに、独居高齢者が安心して文京区で暮らし続けるためには、国の介護保険制度や成年後見制度を、上手に活用することも大切だと思います。
介護保険制度は、ホームヘルパーによる家事や身体介護、デイサービスでの入浴や食事など、独居高齢者に適したサービスを利用する事ができます。ケアマネージャーと相談しながら、その生活環境に合わせたサービスを適切に受ける事も大切です。介護保険制度が導入されて25年が経ち、介護保険サービスの利用者が増えている中、人口構造の変化などに応じて改正を行いながら、限られた財源や介護人材で、これまでもサービスの提供を行ってきました。一方で、「介護や支援が必要な状態である」にも関わらず、介護制度を正しく理解していない、または、介護サービスを受けたがらない方などは、支援が行き届かず、孤立化を進めてしまう結果となる場合もあると考えられます。こうした課題について、区はどのように認識しているのか伺います。
また、成年後見制度は、判断能力が低下した高齢者の権利を守る制度であり、独居高齢者の財産管理や契約などに活用できる仕組みです。しかしながら、利用者数は増加傾向にあるものの、未だ少数にとどまっています。その背景としては、家庭裁判所に申し立てを行う際に、数多くの書類を準備する必要があることや、高額な費用負担を伴うこと、さらには成年後見人の業務負担が大きいことなどがあげられます。本区における独居高齢者の成年後見制度の利用状況と課題について伺います。また、法定後見の開始審判の申立てに占める区長申立ての件数は、2000年の制度開始当初と比べ大幅に増加をしています。その背景には、身寄りのない高齢者が増加し、本人の世話や、必要な時に後見の申立てをすべき親族が見当たらないケースが増えていると考えられます。この点について、本区における区長申立てに関する現状と課題について伺います。
今後も身寄りのない独居高齢者は増加し、行政支援を求める声やその需要は、さらに高まっていくと見込まれます。しかし本区においても、他自治体同様、財源や人員などの限界もあり、必ずしもすべての需要に対応できるとは限らないという、大きな課題を抱えていると感じます。すべて公的扶助に頼れる時代から、健康寿命を延ばす自助努力、そしてそれを支える行政のサポートの両輪が、ますます重要になってくると思います。
本区の独居高齢者の方々とお話をする中で、「できれば子ども家族と一緒に、もしくは近くに住んでほしい」と、本心では望んでいるのではないか、と感じることがあります。戦後80年を経て、核家族化が進み、家族の在り方は大きく変わりました。昭和30年代~40年代に地方から都市部、本区に移り住んで来られた方もいらっしゃいます。生まれた子供は独立や結婚により別居し、さらに配偶者との死別や離婚などを経て、結果として一人で暮らす事になった方は、私の身近にも大勢いらっしゃいます。こうした社会構造に対してどう向き合っていったらいいのか。大変難しい課題ではありますが、本区においては、引き続き独居高齢者対策に積極的に、取り組んでいってほしいと思います。
成澤区長 答弁
松平議員のご質問にお答えします。
最初に、高齢者単身世帯への更なる支援に関するご質問にお答えします。
まず、世帯数の推移と今後の見通しについてのお尋ねですが、
本区の高齢者単身世帯数は増加傾向にあり、今後も高齢者人口の増加に伴い、高齢者単身世帯数も増加していくものと考えております。
次に、地域における見守りや相談についてのお尋ねですが、
議員ご指摘のとおり、町会や高齢者クラブの加入率の低下、民生委員・児童委員の担い手不足が全国的に課題となっており、本区においても同様の状況にあると認識しております。
単身高齢者が増加傾向にある中で、適切に見守りを行うには、地域資源等の更なる掘り起こしや地域活動の活性化が重要と考えております。
引き続き、顔の見える関係づくりの充実を図り、地域包括ケアシステムを推進してまいります。
次に、民間企業の力を取り入れた多様な支援メニューについてのお尋ねですが、
IoTを活用した見守り事業については、事業開始から順調に利用者数が増加しており、その中には、救急搬送につながるなどの事例も報告されております。
また、本年度、文京共創フィールドプロジェクトによる実証実験で、IoTデバイスをつけた電池の家電の使用を検知する「みまもり電池サービス」を実施する予定です。
IoTを活用したものも含め、見守りサービスに関しては、日々新たな機器等が開発されており、その中から適したサービスを選定することが重要と考えております。
高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、見守りのニーズに合った適切な支援について、引き続き検討してまいります。
次に、介護保険サービスの利用についてのお尋ねですが、
介護保険サービスについては、区報や区ホームページ、ちらし等での情報発信に努めるとともに、区の相談窓口で周知を図るほか、高齢者あんしん相談センターや介護サービス事業者等とも連携し、様々な機会を捉えて、必要な方にサービスが行き届くよう取り組んでいるところです。
一方で、必要なサービスを利用しない方が一定数いることも認識しており、見守りの戸別訪問等の機会を捉え、適切に利用できるようご案内しているところです。
単身高齢者に限らず、生活スタイルの変化や様々な事情から、介護保険サービスを含めた支援が必要となる高齢者は、今後増加することが見込まれます。
引き続き、制度の周知と合わせ、個々の事情等を踏まえた支援に努めてまいります。
次に、成年後見制度の利用についてのお尋ねですが、
東京家庭裁判所が管理している本区の利用者数は、昨年12月時点で379人ですが、単身高齢者の数は示されておりません。
なお、判断能力が不十分であるものの、成年後見制度の利用には至らない方が社会福祉協議会と契約する地域福祉権利擁護事業においては、障害のある方を除いた65歳以上の利用者数は、本年8月末時点で47人、そのうち単身高齢者は45人と聞いております。
また、申し立ての煩雑さや利用にあたっての費用負担が課題であると認識しており、社会福祉協議会の権利擁護センターにおいて、申立費用の助成事業や弁護士等による専門相談を実施しております。
さらに、本年度から「市民後見人養成講座」を開始することにより、単身高齢者をはじめとした成年後見制度の利用ニーズに、よりきめ細かく応えてまいります。
次に、区長申立ての現状と課題についてのお尋ねですが、
本区においても、区長申立て件数は増加傾向にあり、その要因として、高齢者単身世帯が増え、親族との関係が希薄になっていることが考えられます。
申立てには、高齢者の生活状況や心身の状態、親族の調査など、慎重かつ丁寧なアセスメントが必要となります。
区長申立ては、本人や親族による申立てが困難な場合に行うことが原則であり、区としては、今後も、ACP(アドバンスケアプランニング)をはじめ、任意後見制度や死後事務委任契約についての周知啓発に取り組んでまいります。
2.外国人児童生徒への対応について
次に、「外国人児童生徒への対応について」伺います。
文京区の外国人人口は、令和7年8月現在、過去最多の16,587名となりました。昨年の同じ月と比べ、約1,690名の増加であり、総人口に占める割合も6.4%から7.0%へと上昇しています。区民のおよそ14人に1人の割合となり、新宿区、豊島区、港区などと比べ低い水準ではありますが、増加傾向にあります。
こうした区内外国人人口の増加は、学校教育の現場に大きな変化をもたらしています。全国的に日本語指導が必要な児童生徒はこの10年間で約2倍となりましたが、本区はそれを上回るスピードで年々増えています。令和6年度、区立小中学校で日本語指導が必要な児童生徒は167名、日本国籍の子どもを含めると176名となりました。そのうち中国語を母語とする子どもは159名で、全体の9割を超えています。今年度もさらに増加傾向にあると認識しておりますが、日本語指導が必要な児童生徒のこれまでの推移と今度の見通しについて、お伺いします。
この背景には、中国国内の経済動向や、本区の住環境や教育環境を求める中国人富裕層の動向が影響しているといわれています。特に今年に入り、ネットニュースやSNS等で、文京区立小中学校の外国籍生徒に関する記事や投稿を目にする機会が増えました。その結果、区民の関心も高まりましたが、中には誇張された情報や、誤った内容で話題が広がっているようにも感じます。不安を煽るのではなく、人権を尊重する多文化共生の地域社会を築くためには、本区の現状を区民に正しく伝えていくことが大切だと感じます。本区の見解を伺います。
これまで本区では、日本語指導協力員を配置し、学級担任と連携をしながら教科学習の支援を行ってきました。しかし、日本語がほとんど分からないまま転入し、授業への参加意欲の低下が見られる児童生徒や、文化の違いから学校生活の適応に苦慮している児童生徒も見受けられるようになっています。また、保護者においても、言葉や生活習慣の違いにより、教職員と十分に意思疎通ができず、学校運営に支障が出たり、保護者間に摩擦が生じたりする事態も発生していると伺っています。
こうした状況を踏まえ、本区では今年10月から、日本語の指導を必要とする児童生徒を対象に、区内の日中学院とアジア文化会館の二ヶ所において、放課後に日本語指導と学校や日常における生活習慣指導を行う「みんなの学びサポート事業」を開始することとなりました。この事業について、募集状況や反響、期待する成果について伺います。
さらに、保護者への対応としては、一部の学校において保護者会終了後の時間を活用し、日本語指導協力員の支援を受けている児童生徒の保護者を対象に、学校生活や生活上の留意点、中国との違いなどを伝えるオリエンテーションを行うと伺っております。実施内容と今後の課題、期待される成果について伺います。
2019年には、外国人が日本語を習得するための基本理念などを定めた「日本語教育推進法」が成立しました。基本方針では、公立学校における日本語教育の推進、外国人の受入れ体制の強化、就学促進、さらには生活指導や進路指導の充実などが示されました。こうした理念の下、受入れる側である各学校や教育委員会の努力により、実態把握や対応は、着実に進んできていると感じています。しかし、今回新たな施策が始まるとはいえ、日本語指導が必要な児童生徒は今なお増え続けており、現場の対応が追い付いていないのが実情ではないでしょうか。今後、さらなる支援が求められる中で、外部団体と連携した学校外での放課後のサポート教室だけではなく、学校内での取り出し指導や、転入前段階での子どもと親を支援する「プレスクール」の実施など、教職員の負担軽減も兼ねた、支援の強化が必要だと考えます。今後の課題とさらなる対策について区の見解を伺います。
日本語を正しく学び、文化の違いを理解することは、日本語の理解が不十分な児童生徒や保護者のためだけではなく、すべての児童生徒と保護者の円滑化なコミュニケーションを促し、安心して授業に参加できる環境を守り、学校運営を円滑に進めるうえで、大変重要な取り組みです。一方で、本区に転入してくる外国人の方々には、当然のように公的支援を前提とするのではなく、言語や文化、学校現場でのルールを学ぶ自助努力も求めていくべきだと考えます。今後も、教育委員会そして区長部局と連携をし、文京区民の子どもたちの学びの環境を守るため、多文化共生社会の実現に向けた取り組みを一層進めて頂きたいと思います。
成澤区長 答弁
次に、外国人の児童・生徒等への対応に関するご質問にお答えします。
まず、適切な情報発信についてのお尋ねですが、
近年、SNSの普及により、個人での情報発信が容易になったことに加え、閲覧数等に応じた収益化の仕組みが、正確性よりも話題性に偏った情報発信に拍車をかけている状況が見受けられます。
誇張され誤った情報が拡散されるのは、情報に曖昧さがあることが一因と言われていることから、不安を煽るような情報の拡散を抑えるには、区が正確な情報を積極的に発信することが重要と考えております。
また、過去のインターネットの検索履歴に基づいた情報に囲まれ、異なる情報に触れる機会が失われる「フィルターバブル」といった現象や、自分と似た興味関心を持つユーザーが集まるSNSなどのコミュニティにおいて、同調する意見がやり取りされることで特定の思想が反響し増幅していく「エコーチェンバー」などによる影響も含め、誤った情報や偏った意見に左右されないよう、区民の情報リテラシーを高める取り組みも重要と認識しております。
すべての区民が安心して暮らすことができるよう、今後一層の情報発信に努めてまいります。
次に、外国人保護者向けのオリエンテーションについてのお尋ねですが、
日本の学校や地域生活に適応していただくため、持ち物等への記名の確認など、学校生活において保護者に期待される役割や、ゴミ出しなどの地域のルールを守る必要性について、外国人講師より説明を行ってまいります。
本事業を通じて、教職員の負担軽減はもとより、住民同士の相互理解が進むことで、地域すべての人が安心して暮らせる共生社会の実現に寄与するものと認識しております。
実施にあたっては、対象者等のニーズを捉えることが必要であり、今後も各学校や地域の状況を注視してまいります。
丹羽教育長 答弁
教育に関するご質問にお答えします。
はじめに、日本語指導を必要とする児童・生徒への支援についてのお尋ねですが、
日本語指導が必要な児童・生徒の数は、ここ数年増加傾向にあります。また、当面の間、減少に転じることは考えにくく、増加を前提とした対策を講じる必要があると認識しております。
次に、「みんなの学びサポート事業」についてのお尋ねですが、
定員に近い申込みがあり、対象者及びその保護者からの期待は高いと認識しております。レッスンを受けた児童・生徒が授業や学校生活へ適応し、児童間・生徒間、教員とのコミュニケーションの円滑化が図られ、学級内の全ての児童・生徒が楽しく、安心して授業に参加できるようになるものと考えております。
次に、日本語指導における課題とさらなる対策についてのお尋ねですが、日本語指導を必要とする児童・生徒及びその保護者とのコミュニケーション等に係る教員の負担が課題と捉えております。そのため、新たな人材の配置等について検討してまいります。
議員ご提案の様々な取組みも参考にしながら、まずはみんなの学びサポート教室事業を実施する中で、随時必要な見直しを行い、より効果的な支援となるよう努めてまいります。
3.いじめの問題について
最後に「いじめの問題について」伺います。
いじめは児童生徒やその保護者のみならず、学校全体、さらには地域社会にも深刻な影響を及ぼす重大な社会問題です。文部科学省が実施する「児童生徒の問題行動・不登校等調査」によれば、令和5年度の全国の公立学校でのいじめの認知件数は73万件を超えました。コロナ禍で一時的に減少したものの、その後は3年連続で増加し、過去最多となっております。東京都内でもいじめの認知件数は過去最多となり、本区も例外ではなく増加傾向にあります。令和5年度において区立小学校では149件、中学校では69件が認知され、5年間で約2.3倍の増加となっています。
こうした背景には、アンケートや教育相談の充実など、早期発見の取り組みが進んでいることや、学校の積極的な認知への理解が広がっていることが考えられる一方、近年はSNS上での無視や仲間外れ、誹謗中傷など、これまでには無かったいじめが増えていることも要因です。いじめの形態はますます多様化・複雑化しており、当事者である子ども同士、保護者、学校、教育委員会だけの問題ではなく、地域社会全体で向き合うべき問題であると思います。近年、私のもとにも、被害者の保護者の方からのいじめに関する相談が多く寄せられており、不登校を経て、転校を余儀なくされた事例や、学校や加害者に対する不満や行き場のない憤りなど、様々な声を伺うようになりました。被害者側の望まない転校や不登校、事故、心の病、自殺未遂等の事態を防ぎ、解決に向けた対応が求められていると感じています。
本区では、2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」に基づき、「文京区いじめ防止対策推進基本方針」を策定し、2018年には「いじめ対応マニュアル」を改定するなど、いじめの未然防止、早期発見、早期対応に取り組んでいます。
まず未然防止についてです。「発生してから対応する」対症療法的な対策ではなく、「いじめは絶対に許されない行為であり、いじめを発生させない学校風土や、いじめを行わせない人間関係づくり」が何より重要です。現在、区立学校では、教育委員会と連携し、「いのちと人権を考える月間」、「ふれあい月間」、道徳授業地区公開講座などの啓発活動を実施しています。また、先生方による人権意識や自己肯定感を高める指導、思いやりの心や命の大切さなどを学ぶ道徳教育も行われています。これまで様々な啓発活動や道徳教育による未然防止の対策を行ってきましたが、これまでの成果と今後の課題について、どのように評価しているのでしょうか?区の見解を伺います。
また、スマートフォンの普及により小学生の約7割、中学生のほぼ全員が自分専用のスマホ端末を持つ時代となりました。小中学生がインターネットを日常的に利用する中で、無意識によるいじめを防ぐためにも、公共ネットワークのルールやマナーを身に着けさせる「情報モラル教育」の一層の充実が必要だと感じます。本区の情報モラル教育に関するこれまでの取り組みと課題、今後の展開について本区の見解を伺います。
さらに、発達障害の疑いや特別支援教室に通う児童生徒、不登校支援の校内別室に通う児童生徒、または外国籍の児童生徒への、からかいやいじめの防止も重要です。インクルーシブ教育の理念に基づき、国籍、言語、性差、障害の有無に関わらず、すべての人を認め合う教育環境の実現に向けた指導の充実について、本区の見解と今後の展開について伺います。
次に早期発見、早期対応についてです。現在、区立学校では、児童生徒への定期的なアンケート調査による実態把握や、スクールカウンセラーとの連携による教育相談の促進、相談体制の整備などが進められています。また「いじめ防止対策校内委員会」などの組織を設置し、早期の実態把握と対応に関する協議を行っています。
しかしながら、休日や長期休業中のやり取り、あるいはSNS上の閉鎖空間でのやり取りなど、学校外で起きるいじめについては、早期発見がより難しくなっているのが現状です。そのため、児童生徒からのアンケートや相談といった情報提供の取り組みに加え、保護者やPTA、民生児童委員や地域支援本部など、地域との連携をさらに強化することが重要だと考えます。
教職員だけではなく、保護者や地域に対しても「どういった行為がいじめに該当するのか」といういじめの定義を共有し、また学校の対応方針についても、ホームページに限らず、日頃から周知し、共通認識を持つ事が必要だと感じます。保護者や地域が学校の対応方針を理解し、安心して相談できる環境を整えることは大切であり、逆に、共通認識が不十分なために、学校の適切な対応が円滑に進まない、あるいは、学校と保護者が対立し、早期対応に向けた協力が得られないといった事態は避けなければなりません。
学校外やSNS上での目に見えにくいいじめが増加し、被害の形態やその範囲もますます多様化している状況の中、早期発見・早期対応をより進めるためにも、保護者や地域との共通認識に基づく、より一層の相互連携が求められると思います。この点について、現状の課題と今後について、本区の見解を伺います。さらに、学校だけでは実態把握や早期解決が困難な重大事態への対応において、今年4月に開設した文京区児童相談所や警察などの関係機関との、より一層の連携が重要になると考えますが、本区の見解を伺います。
2023年こども家庭庁が発足しました。これまで文部科学省が担ってきた取り組みに加え、新たに子ども家庭庁がこども社会でのいじめ防止を担い、自治体の首長部局からのアプロ―チによる、いじめ解消に向けた新たな手法の開発・実証が始まっています。今年4月時点で全国13の自治体が実証地域として選ばれており、具体的には、いじめ相談窓口や専門部署の設置、被害者側に寄り添った対応としての弁護士費用の補助や転校費用の支援、さらには法律・医療・心理・福祉などの専門家を「いじめアドバイザー」として委嘱し、相談助言を行うなどの多角的な対策の検討が進んでいます。本区はこれまで、子どもの様々な悩みや困りごとに寄り添う相談室の設置や、こどもの権利を守るための条例の策定に向けた取り組みを進めてきました。今後、いじめ対策に関する区長部局からのアプローチについて、区はどのような見解をお持ちでしょうか?今後の展開について伺います。
長い年月かけて、国や自治体、学校は様々な対策を行っていますが、残念ながらいじめは今なお無くなっておりません。本区は中学校受験率が高く、低学年から塾に通う児童生徒も多くいます。塾と学校のダブルスクールにより生活リズムが乱れ、親からのプレッシャーを感じ、精神に不安定になる児童生徒もいるのではないでしょうか。またインターネットから何でも情報が得られる時代となり、先生から教えてもらうよりも先に、塾やネットで得られる情報や知識も増えました。そのため、先生に敬意を払う気持ちや、教室は知らない知識を教えてくれる場であるという意識が失われつつあることも懸念されます。さらに、スマートフォンに向き合う時間が増え、集団生活や遊びを通して育まれる共感性や対面でのコミュニケーションの機会が減っていることも、いじめを根絶できない一因なのかもしれません。
海外に目を向けると、フランスでは2022年に刑法が改正され、学校でのいじめが「犯罪」として規定されました。加害者には最大10年の拘禁刑や罰金が科せられ、さらには保護者の了承がなくても強制的に転校させることが可能となりました。また韓国では、2023年4月にいじめの総合対策の全面的な見直しが行われ、いじめの加害記録を大学入試の合否判定に反映させるという方針が発表されました。
日本とは社会的背景が異なるため単純比較はできませんが、加害者への厳罰化はいじめの抑止力として一定の効果があるとは思います。しかしながら、私は未来ある子ども達に対し、日本は安易に加害者を罰する厳罰政策に舵を切るのではなく、親の愛情はもちろん、人権教育や道徳教育に基づく先生方の熱意と温かい指導、そして学校・教育委員会・保護者・地域・関係団体・行政、すべての大人達が一体となった見守りや関わりによって子ども達のいじめを防ぐ、地域社会づくりを目指してほしいと強く願います。
以上で私の質問を終わります。ご清聴誠にありがとうございました。
成澤区長 答弁
最後に、いじめ対策についてのご質問にお答えします。
子ども応援サポート室では、子どもが抱える様々な悩みや困りごとの相談を受け付けており、本年6月からは、区立小・中学校の全児童・生徒に貸与しているタブレット端末からも直接相談できるよう、専用のアイコンや相談フォームを整備したところです。
また、現在策定中の「(仮称)こどもの権利に関する条例」の素案では、いじめ等による権利侵害の防止を規定しており、区の具体的な取り組み等を定める予定です。
さらに、同素案では、こどもの権利擁護委員を設置し、子どもからの相談に応じ、必要な支援等を行うこととしております。
今後とも、教育委員会や関係機関との連携を強化するとともに、他自治体の好事例も参考にし、いじめの未然防止、早期発見、早期対応に取り組んでまいります。
なお、教育に関するご質問には、教育長よりご答弁申し上げます。
丹羽教育長 答弁
次に、いじめ対策についてのお尋ねですが、
これまで、啓発活動や道徳教育等により、児童・生徒の人権意識や自己肯定感の向上に努めており、いじめの未然防止に寄与しているものと認識しております。課題としましては、いじめの様態が多様化・複雑化する中で、保護者・関係者への聞き取り等の対応に学校が苦慮しており、案件によっては解決に時間を要することがあります。
次に、情報モラル教育についてのお尋ねですが、
外部講師を招へいしての授業や情報モラル教材アプリ等を活用し、情報活用能力の育成を図っております。今後も、こうした取組みを継続し、児童・生徒の情報モラルの向上を図ってまいります。
次に、議員ご指摘のすべての人を認め合う教育環境の実現に向けた指導の充実についてのお尋ねですが、
児童・生徒の人権意識の向上を図るために、「いのちと人権を考える月間」等の人権教育にかかわる取組みを行っております。
また、人権教育の充実を図るためにも、関係機関との連携し、様々な人権課題について学び、考える機会を設けられるよう努めてまいります。
最後に、いじめの早期発見・早期対応をより進めることについてのお尋ねですが、
学校の対応だけではなく、保護者や地域の理解及び他機関との連携が重要であると認識しております。そのため、学校が真摯に取り組んでいるいじめ防止の取組みについて積極的に情報発信する必要があると考えております。
また、区児童相談所や警察等の関係機関と素早く連携がとれるように体制を整えることが重要であるため、今後とも連携の強化に努めてまいります。